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トップページ原爆の絵ハッとして我に返る

原爆の絵

識別コード SG-0188
絵の内容 ハッとして我に返る
作者名(カナ) 森 孝人(モリ タカト)、森 蓮枝(モリ ハスエ)
作者名(英語) Takato Mori、Hasue Mori
当時の年齢 21歳、21歳
寄贈者名
種別 新市民が描いた原爆の絵(その他)
情景日時 1945/8/7(時刻)10:00前
情景場所 羽衣町元安川西岸付近
情景場所旧町名 吉島羽衣町
情景場所現町名 羽衣町
爆心地からの距離 1,700m
ブロック別 吉島・舟入・観音地区
作者による説明 **別紙
【ハッとして我に返る】
 焼け野原となった町を歩きながら「これから先、日本の国はどうなるんだ」「私たち国民はどうなるんだ」そんなことばかりが頭の中にいっぱいに広がり、そして消えていきます。
 私は夢の中にいるような気持ちで鷹野橋を通って軍事教官黒沢大佐の住まいがある吉島本町に向かっていました。それは私の心のどこかに「被害報告書を出した」ということや学校や町の状況をお知らせしたいという気持ちがあったからでしょう。
 南大橋をわたって川沿いに南へ行った所で、思わずハッとして我に返りました。道のど真ん中にはだかの大男が三人同じようにひざまずいた恰好で息絶え、行く手をふさいでいるではありませんか。足を止めて後ずさりしました。
(「ああ!あの日あの時」より)

私の証言(抄) 森 孝人(当時21才)
 青白い閃光が眼前を走り、火炎がすさまじい勢いで上空をよぎるのがチラッと見えたとたん、バシッという音と共に二階建ての寮が激しく揺れました。廊下に身を伏せた私の目の前に窓ガラスの破片が降り注ぎ、どこかでドーンと鈍い音が轟きました。一トン爆弾だ!もはや防空壕に行く余裕はない。そう思って外に走り出るなり芋畑の畝の間に腹這いになってじっと次の瞬間を待っていました。
 でも何事も起こりませんでした。急いで校舎玄関に行き広島上空を見ると、巨大な煙の塊が現われ、煙全体が無気味に大きな対流作用を起こしながらゆっくり上昇しています。そして、不思議にも煙とその煙の発生源と思われる市街地の間が透いて見えるのでした。
 当時、本科生の大半は動員で呉工廠に行き、私は学校に残されて軍事教官の事務をしていました。その教官室も今や爆風で窓ガラスや書類等が飛散し見るかげもありません。
 ガラスで負傷した同僚たちの手当てをしているところへ、通学生が腕にやけどしてたどり着きました。どうやらB二九が空中にガソリンを撒いて火をつけたらしいと言うのです。
 その時の不吉な予感が的中したかのように予科寮倒壊の知らせが入り、直ちに私たちは炎天下皆実町に向かってひた走りました。
 比治山南麓来てみると電信隊の兵舎は飴のように曲がり、ガスタンク付近は大火災です。紺碧の上空にきのこ状の大煙柱が聳えるその下で予科寮は無残に潰れていました。 鋸を手に這いながら入る寮の中はほの暗く、時折聞こえるうめき声をたよりにそれに近づこうとしても机イス、柱や梁の類が折り重なって道路を阻みました。流汗りんり、まさに蒸しぶろです。遠くで空襲警報と叫ぶ声がするがそれどころではありませんでした。
 夕方、私は一たん東雲町の学校に帰り、予科生に数名の死者ある模様などと書き込んで被害報告書を作成、軍管区指令部に提出すべくたそがれ迫る的場に出ました。
 そこで私は改めて事の重大さを知ったのです。全裸半裸の人々が至る所に倒れうずくまり、苦しみあえいでそれはさながら地獄絵でした。それに倒れかかった道端の家々から火の手が上がり行く手をさえぎりました。
 やむなく比治山橋まで南下。でも同様でした。「水がほしい」「連れて行って!」口々に必死に訴えるがどうすることもできません。元気な自分が情けなくなりました。
 橋を渡るとそこは見渡す限り焼け野原、夕陽の中に余燼の煙が立ちのぼっていました。その向こうから赤ん坊を背負い、幼い男の子を連れた母親がよろめきながら近づいてきました。裸の三人は全身が黒く焼けただれ、顔は目がつぶれるほど腫れています。母親の肩から胸にかけて剥げた皮膚がぼろ切れのように垂れ下がっていました。「水を飲ませて下さい。けさから飲んでいないのです。」細い声で呼びかけました。「やけどに水はいけませんよ。」と言うと、「お願いです。死んでもよいから飲ませて下さい。」母親は重ねて哀願しました。私は判断に苦しんだあげく意を決し、「それでは」と言ってとぼとぼ道を引き返しました。そして「ここに手押しポンプがありますよ。」心を鬼にして道端の井戸を指差したその時です。井戸のそばに倒れていた五十がらみの男の人が急に頭をもたげ、恐ろしい形相で絶叫しました。「やけどに水を飲むな。死ぬぞ!」その声は肺腑をえぐり、私は思わず目をそむけました。それは余りにもむごたらしい光景でありました。
 その夜、広島師範のある田園地帯のここ東雲に人々は続々避難して来ました。肉親を探し求めてその名を呼ぶ声が交錯して夜のとばりを引き裂き、ある人は狂気のように号泣しある人はすすり泣きました。この世に終焉の時が迫る気配のする夜でありました。(以下省略)
サイズ(cm) 27×38
展示の説明文

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