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トップページ原爆の絵水をねだる女の子 トマトをやるが、うまく食べられただろうか今も気になる

原爆の絵

識別コード GE33-13
絵の内容 水をねだる女の子 トマトをやるが、うまく食べられただろうか今も気になる
作者名(カナ) 中津 久子(ナカツ ヒサコ)
作者名(英語) Hisako Nakatsu
当時の年齢 26歳
寄贈者名
種別 市民が描いた原爆の絵(昭和49、50年収集)
情景日時 1945/8/7(時刻)13:00頃
情景場所 観音町の土手
情景場所旧町名
情景場所現町名
爆心地からの距離
ブロック別 吉島・舟入・観音地区
作者による説明 **裏
(中津久子 舊始、一桝)
(被爆当時、住所は草津東町。)
昭和二十年八月七日午后一時頃と思います。六日当日は勤務先の皆実保育所より東へ逃げ、同僚だった、運輸部副官伊藤敏少佐の御令嬢敏子さんの御好意に甘え、主任(河本キクノ先生)と一緒に、その疎開先仁保遊園地内の御宅に一泊、翌七日朝十時頃、草津町の家に一人残る母が心配なので主任(己斐本町にお宅があった)と連立って、まだ余燼の残る街中を東から西へと歩きました。
この絵は、確か観音町の土手だったと思います。
電柱の僅かな蔭に陽をさけて、かがんでいた女の子が、私の持つヤカンの音(こわれた保育所に立寄りヤカンと湯呑五〇箇=(これはバケツに入れて持った。)ヤカンの中には園庭で箱作りしたトマトの未熟な実を、ぎっしり詰めて持っていた。)を聞きつけて、「お水!!お水をちょうだい!!」と叫んだ。
「これ、水ではないのよ。トマトなの」と云うと「あ!私のすきなトマト!!」と嬉しそうに云う。仕方なく私は、青い固い実を一つ手渡した。ふり仰いだ顔は、いたましい限り、白くただ小眼も鼻も定かならず、唇は白くむくれただれて開きそうにもなかった。さし出した手は両方とも指が一もちにくっつき、俗に云うデンボウとはこれかと胸をつかれた。先を急ぐ余りとは云え、後になって、なぜ、あのトマトを半分に千切って渡さなかったか、あの子は、どうやってあの手と、あの唇で、あの硬いものの汁を啜ることが出来ただろうかと、悔やまれ、今だに済まないと合掌する。その子の反対側の道傍に倒れた男の人は、陽を避けるためであろうか、麦わら帽子を顔の上にのせ、私達の足音に気づき、「頼みます、たのみます!」と呻くのだった。そのズボンが眞白く、糊付けしたのか眞新しいのか、パリッと陽を反射していたのも、反って、むごくたまらない気持で、私達は逃げるように立去ったのだが、先を急ぐとは云え、何とか手だてはなかったかと後悔するばかりである。
サイズ(cm) 38×52
展示の説明文

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